賃貸不動産経営管理士の難易度は?試験概要や受験資格、資格取得のメリットなど

目次
『賃貸不動産経営管理士』という資格について
賃貸不動産経営管理士は、“賃貸管理士”とも呼ばれ、賃貸住宅(賃貸アパート・マンションなど)の管理に関する知識や技術、倫理観を備えた専門家です。
国土交通省が掲げている「フロー(新築)重視から市場重視・ストック(既存)重視」の政策(新たな住宅政策の在り方について※国土交通省PDF)における活動の一環として、国土交通省告示『賃貸住宅管理業者登録制度』が平成28年9月に改正されました。
この改正において、それまで明確な役割がなかった賃貸不動産経営管理士に明確な役割が付与されることとなりました。
賃貸不動産経営管理士は、賃貸不動産管理のスペシャリストとしてその職務の重要性から今もっとも注目されている資格の一つと言えるでしょう。
この頁では賃貸不動産経営管理士について、試験内容や受験資格など詳しく解説していきます。
まず初めに、賃貸住宅管理業者登録制度を知ろう
賃貸不動産管理業者登録制度とは
賃貸不動産管理業者登録制度とは、賃貸住宅における管理業務の適正化を図るため、平成23年12月より国土交通省が創設した賃貸住宅管理業者に関する任意の登録制度です。
制度の目的
賃貸住宅管理業者登録制度は、賃貸住宅管理業者が行う業務に関して一定のルールを設けることで、その業務の適正な運営を確保するとともに、借主と貸主の利益保護を図ります。
また登録事業者は公表されるため、消費者は管理業者の選別や物件を選択する際の判断材料として活用することができます。
この制度では、貸主、借主、管理業者間に適正なルールを設け、信頼関係が構築されることで、トラブルの未然防止や適切な管理を行う事業者が評価されることが期待されています。
登録を受けるためには、事務所ごとに1名以上の実務経験者等(管理事務に関して6年以上の実務経験を有する方又は賃貸不動産経営管理士の登録を受けている方)を置く必要があります。
賃貸不動産経営管理士とはどういった資格なのか
賃貸不動産管理に関するスペシャリスト
賃貸不動産経営管理士は、入居者が入居してから退去するまで長期に及ぶ期間、家主だけではなく入居者のトラブル対応や建物の管理について専門的な知識を習得し、みなさんの生活をサポートする知識・能力を兼ね備えています。
※賃貸不動産経営管理士の設置義務
前述したように、賃貸住宅管理業者登録制度において、登録を受けるためには、事務所ごとに1名以上の実務経験者等(管理事務(※)に関して6年以上の実務経験を有する方又は賃貸不動産経営管理士の登録を受けている方)の配置が求められています。
※ 管理事務=管理受託型またはサブリース型の管理業者+基幹事務のうちの少なくとも1つを含む
賃貸不動産経営管理士登録制度の基幹事務とは
管理事務には、下記3つの基幹事務のうち少なくとも一つを含むことが必要とされています。
(1)家賃、敷金等の受領に係る事務
家賃、敷金、共益費、管理費など賃貸借契約に定めのある金銭を受領する業務
(2)賃貸借契約の更新に係る事務
賃貸人から賃貸借契約の更新の事務を委託された場合の業務。賃貸人の更新意思の確認、新賃貸条件の提案・交渉、更新書類作成など
(3)賃貸借契約の終了に係る事務
期間満了による契約終了の通知など契約終了のための手続き、明渡しや原状回復の事務連絡、敷金の清算事務など
賃貸不動産経営管理士の役割
賃貸不動産経営管理士は不動産管理を行う上で必要不可欠な存在
賃貸住宅管理業者登録制度において、下記の業務は賃貸不動産経営管理士(又は、一定の実務経験者)が行うことが義務付けられています。
貸主に対する管理事務の説明、サブリース方式の場合の契約時の説明等
賃貸不動産経営管理士等は、サブリース原契約成立までに、オーナーに対してその契約内容の重要事項を書面を交付し説明しなければなりません。
貸主に対する賃貸住宅管理に係る重要事項の説明及び書面への記名・押印
重要事項説明書に記載されている内容に誤りがないかを確認後、賃貸不動産経営管理士等が記名・押印を行います。
貸主に対する賃貸住宅の管理受託契約書の記名・押印
貸主との管理受託契約が成立したときは、賃貸不動産経営管理士等が契約書を作成し、記名・押印を行います。
住宅宿泊管理業者の登録
住宅宿泊管理事業を行うためには賃貸不動産経営管理士等(※)の登録を受けている事が必要です。
※ 住宅の取引又は、管理に関する2年以上の実務経験を有するものなど
賃貸不動産経営管理士資格取得のメリット
賃貸不動産経営管理士を取得すると、あらゆる分野で様々なメリットがあります。
就職・転職の上で有利に働くことはもちろん、ビジネスチャンスを広げることも夢ではありません。
不動産
- 賃貸不動産管理に関する業務の幅が広がるためキャリアアップが期待できる
- 賃貸管理のプロとして、家主や入居者との信頼関係を構築できる
- 他不動産業者との差別化を図れる
- 資格手当が支給されたり昇進したりといった優遇を受ける可能性もある
- 成長産業である賃貸不動産管理業界で、ビジネスチャンスを掴める

総務・金融等・不動産業務に関連する部門
- 不動産担保の融資や資産活用など金融面でも大きく役立てることできる
- 従業員の社宅斡旋やそれに係る業務に役立つ知識が身につく
- 不動産関連部門の創設や事業拡大の一助となる
- 建設業でも建物の活用などの分野で活かすことできる

就職・転職で履歴書に書ける
賃貸不動産経営管理士の資格保有者として特に不動産業界への就職に有利であるといえます。
- 成長途中の資格であるため、未だ所持者が少なく、取得していることで大きく差をつけることができる
- 不動産業界は転職しやすい業界でもあるため、他業種からの転職にも強くなることができる

賃貸不動産経営管理士試験について
願書申込方法
願書申込方法などに関する詳細は、
一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会受付センターへお問い合わせいただくようお願いします。
一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会受付センター
TEL:04-7170-5520(電話受付:平日11:00~17:00)
一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会ホームページ
https://www.chintaikanrishi.jp/
受験資格
受験資格なし。
どなたでも受験が可能です。
ただし、試験合格後、資格登録を行うには以下の登録要件が必要となります。
登録要件
宅地建物取引士(注1)、又は協議会が認める賃貸不動産関連業務(注2)に2年以上従事している又は従事していた者。
(注1) 登録手続き時において、有効な宅地建物取引士証の交付を受けている方。
(注2)協議会が認める賃貸不動産関連業務の従事者とは、宅地建物取引業、不動産管理業、不動産賃貸業(家主)及び協議会構成団体の会員とその従事者のほか、協議会が認める者。
※協議会構成団体は、(公財)日本賃貸住宅管理協会、(公社)全国宅地建物取引業協会連合会、(公社)全日本不動産協会の3団体
令和2年賃貸不動産経営管理士試験実施日程(予定)
試験日 | 令和2年11月中旬 |
---|---|
出題形式 | 四肢択一(40問) |
資料請求・受験申込期間 | 令和2年8月中旬 ~ 9月下旬 |
合格発表 | 令和3年1月中旬予定 |
資料請求・受験申込は一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会ホームページから行うことができます。
なお、CIC日本建設情報センターでは受験申込に関する手続等を行っておりません。出願期間中に受験生の皆様ご自身で受験申込を行っていただきますようお願いいたします。
試験会場(全国17会場)※令和元年の例
札幌、盛岡、仙台、大宮、千葉、東京、横浜、金沢、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、高松、福岡、熊本、沖縄
受験手数料※令和元年の例
12,960円(税込)
試験の出題範囲※令和元年の例
賃貸管理に関する実用的な知識を有するかどうか等を判定することに基準を置くものとし、試験すべき事項はおおむね次のとおりです。
- 賃貸管理の意義・役割をめぐる社会状況に関する事項
- 賃貸不動産経営管理士のあり方に関する事項
- 賃貸住宅管理業者登録制度に関する事項
- 管理業務の受託に関する事項
- 借主の募集に関する事項
- 賃貸借契約に関する事項
- 管理実務に関する事項
- 建物・設備の知識に関する事項
- 賃貸業への支援業務に関する事項(企画提案、不動産証券化、税金、保険等)
※ 問題中法令に関する部分は、平成31年4月1日現在施行されている規定に基づいて出題されます。ただし、同日以降に施行される法令に関する問題を、その旨を明示したうえ出題する場合もあります。
賃貸不動産経営管理士の難易度
試験結果データ
申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合否判定基準 | |
---|---|---|---|---|---|
平成30年 | 19,654名 | 18,488名 | 9,379名 | 50.7% | 29点 |
平成29年 | 17,532名 | 16,624名 | 8,033名 | 48.3% | 27点 |
平成28年 | 13,862名 | 13,149名 | 7,350名 | 55.9% | 28点 |
平成27年 | 5,118名 | 4,908名 | 2,679名 | 54.6% | 25点 |
平成26年 | 4,367名 | 4,188名 | 3,219名 | 76.9% | 21点 |
平成25年 | 4,106名 | 3,946名 | 3,386名 | 85.8% | 28点 |
賃貸不動産経営管理士は、受験者数がこの5年で4倍以上と急増しており、社会的に大変ニーズが高まっている資格です。
平成28年(2016年)に国土交通省が『賃貸住宅管理業者登録制度』を一部改正し、賃貸不動産経営管理士等の役割を明確化させると共に、登録事業者の事務所ごとに1名以上の賃貸不動産経営管理士等の配置を義務付けました。
この改正により、賃貸不動産経営管理士の受験者数は平成30年の受験者数が平成25年の受験者数に比べ5年で約4倍に増加しました。
加えて、賃貸不動産経営管理士の試験本部である『一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会』は、2019年度より国家資格化を見据えた試験時間と出題数の変更を発表しました。
プレスリリース:国家資格化を見据え、賃貸不動産経営管理士試験の出題数と試験時間を変更(外部リンク/一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会ウェブサイト)
この発表により、賃貸不動産経営管理士の受験者はますます増加すると考えられます。
合わせて注目したいのが合格率です。賃貸不動産経営管理士の合格率は2013年は85.8%と殆どの方が合格できる試験でしたが、2018年の合格率は50.7%と2人に1人が不合格となるほど難化しました。国家資格化を見据えた現段階で、この傾向は今後さらに強まっていくと考えられます。
そして、今後、国家資格化するとなればますます合格率は下がることが予測されます。
つまり、賃貸不動産経営管理士の試験は正に今が『狙い目』と言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
賃貸不動産経営管理士は、国土交通省が「賃貸住宅管理業者登録制度」を一部改正した平成28年の受験者数がその前年である平成27年の約2.7倍と急増し大変人気の資格となりました。その反面、合格率は平成25年の85.8%に比べ平成30年は50.7%と下がっており難易度は上がっています。
今後、国家資格となる可能性がある資格のため試験の難易度は今後も難化していくことが予測され、資格取得は早ければ早いほど良いと言えるでしょう。
賃貸不動産経営管理士は、取得すれば不動産業界はもちろんのこと建設業界やハウスメーカー、金融業界でも資格を活かし活躍できる可能性を秘めた資格です。
この機会に、賃貸不動産経営管理士の資格を目指してみることをお勧めいたします。
