工事担任者について、試験概要や受験資格、資格取得のメリットなど

目次
工事担任者について
「工事担任者」資格は、電気通信回線と端末設備等を接続するために必要とされる資格です。「工事担任者」は、アナログ電話回線やデジタルデータ回線(現在整備が進められている次世代ネットワーク(NGN)などのIPネットワークを含む)などに、さまざまな端末設備等を接続する工事を行い、あるいは監督をする役割を担っています。
たとえば、電気通信事業者の光ファイバにパソコンやIP電話機、OA機器、IP-PBXなどを接続します。さらに、企業内のLANと呼ばれる構内通信ネットワークの配線工事を行います。また、家庭内においては、インターネットなどを介して、音楽・映像配信、遠隔教育、防犯システムなどの新しい各種サービスを実現するために、光ファイバに端末設備等を接続します。具体的な工事の範囲は、資格の種類により異なります。
「工事担任者」は、これからの情報通信ネットワーク社会を支えるネットワーク接続技術者(通称)として期待され、その活躍の場はますます拡がっています。
「工事担任者」資格は、国家資格です
「工事担任者」資格は、法令で定められた「国家資格」です。
電気通信事業法では、電気通信回線に端末設備等を接続する場合は、「工事担任者」が直接工事を行うか、あるいは実地にこれを監督することとされています。
昭和60年に誕生した「工事担任者」資格は、情報通信ネットワーク社会を支えるネットワーク接続技術者であることを証明する唯一の国家資格として、平成17年8月1日に大幅に改正されました。
工事担任者の仕事
工事担任者の役割
電気通信事業法第71条第1項により、電気通信事業者の設置する電気通信回線設備に利用者が使用する端末設備又は自営電気通信設備を接続するとき、またそれらの工事を監督する際には、工事担任者の設置が規定されております。工事担任者は事業用ネットワークの損傷やその機能に障害を与えないように、また他の利用者に迷惑を及ぼさないよう適切な施工が実施されるよう務めることが求められる役割となります。
工事担任者の業務
工事担任者は、端末設備等を事業用ネットワークへ接続する工事のほか、これに伴う調整及び通信線を配線する工事など端末設備等の接続により通信が可能となる一切の工事に対して責任を負うことになります。
主な職務としては下記の3つとなります。
- 工事の実施又は実地の監督
- 端末設備の機能確認試験等
- 端末設備等を事業用ネットワークに接続するときの責任分界点における技術基準適合性の確認
また、工事担任者は、事業用ネットワークに端末設備等の接続が良好に行われるよう担保する責任を負うことになるため、接続工事の実施又は実地の監督等の職務を誠実に行う義務があります。(電気通信事業法第71条第2項)
工事担任者資格の種別について
工事担任者は携われる工事範囲により7つに区分されており、種別によって担当できる工事範囲が異なります。それぞれ実施できる工事の範囲は以下の表のとおりです。
工事担任者資格の種別による工事を行える範囲
工事担任者資格はAI第一種~第三種、DD第一種~第三種、AI・DD総合種の合計7種類があります(令和元年8月現在)。
資格種別 | 工事の範囲 |
---|---|
AI第一種 | アナログ回線及びISDN回線に端末設備等を接続するための工事全て |
AI第二種 | 50回線(内線200回線)以下のアナログ回線及び64kbps換算で50回線以下のISDN回線に端末設備等を接続するための工事 |
AI第三種 | 1回線のアナログ回線及び基本インターフェイスが1回線のISDN回線に端末設備等を接続するための工事 |
DD第一種 | デジタル回線(ただしISDN回線を除く)に端末設備等を接続するための工事(以下、DD種の工事)全て |
DD第二種 | DD種の工事の内、100Mbps以下(ただしインターネット接続工事の場合は1Gbps以下)の工事 |
DD第三種 | DD種の工事の内、1Gbps以下のインターネット接続工事 |
AI・DD総合種 | アナログ回線及びデジタル回線に端末設備等を接続するための工事全て |
工事担任者を必要としない工事種類
技術基準に適合した端末機器をプラグジャック方式等で接続する場合であれば、一般利用者が行っても他の利用者に悪影響が及ばないことから、工事担任者による工事は必要ありません。
但し、責任分界点からプラグジャック方式の接続口まで配線を行う場合や接続口を移設する場合のほか、事業用ネットワークの機能に障害を与える、他の利用者に迷惑及ぼすなど技術基準の適合性への影響が不明確なオフィスビル内に設ける規模の大きい端末設備や自営電気通信設備を接続する場合等には工事担任者が必要となります。
※ 工事担任者を要しない端末機器の接続の方式(郵政省告示第224号)
- 一.プラグジャック方式により接続する接続の方式
- 二.アダプタ式ジャック方式により接続する接続の方式
- 三.音響結合方式により接続する接続の方式
- 四.電波により接続する接続の方式
※ 試験概要の詳細については、管轄である総務省のホームページより確認できますので、不明点についてはご確認下さい。
工事担任者資格試験について
工事担任者試験は、電気通信事業法に基づく免許試験で、(一財)日本データ通信協会が実施するものです。
試験日程
工事担任者の試験は年2回実施されています
工事担任者試験は毎年、春(5月)と秋(11月)に実施されています。
令和2年「工事担任者」試験日程(予定)
工事担任者試験の試験日程は例年12月上旬に公示されます。
申請内容 | 申請受付期間 | 試験日 | 合格発表 | |
---|---|---|---|---|
第1回 | 申請書による申請 | 令和2年2月1日(土)~3月5日(木) | 令和2年5月24日(日) | 令和2年6月15日(月) |
実務経験による試験科目の 免除申請を伴う試験申請 |
令和2年2月1日(土)~2月21日(金) | |||
インターネットによる申請 | 令和2年2月1日(土)~3月5日(木) | |||
インターネット申請の 試験手数料払込期限 |
令和2年3月6日(金) | |||
第2回 | 申請書による申請 | 令和2年8月1日(土)~9月7日(月) | 令和2年11月22日(日) | 令和2年12月14日(月) |
実務経験による試験科目の 免除申請を伴う試験申請 |
令和2年8月1日(土)~8月21日(金) | |||
インターネットによる申請 | 令和2年8月1日(土)~9月7日(月) | |||
インターネット申請の 試験手数料払込期限 |
令和2年9月8日(火) |
受験資格
年齢、性別、学歴等に制約はありません。どなたでも受験できます。
受験科目の免除等については、試験本部ウェブサイトでご確認下さい。
受験科目
- 【解答形式】3択~6択(全問マークシート)
- 【合格基準】100点満点中60点以上
工事担任者試験(AI・DD総合種)出題問題数
科目 (各科目100点満点) |
問題番号ごとの解答数 | 総出題数 (各配点) |
|||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
第1問 | 第2問 | 第3問 | 第4問 | 第5問 | 第6問 | 第7問 | 第8問 | 第9問 | 第10問 | ||
(1)電気通信技術の基礎 | 4 | 5 | 4 | 4 | 5 | - | - | - | - | - | 全22問 (各4~5点) |
(2)端末設備の接続の ための技術及び理論 |
5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 全50問 (各2点) |
(3)端末設備の接続に 関する法規 |
5 | 5 | 5 | 5 | 5 | - | - | - | - | - | 全25問 (各4点) |
(注)総出題数の()内は各設問毎の配点を示しています。各設問の配点は以下のとおりです。
(1)電気通信技術の基礎は、第1・3・4問は各5点、第2・5問は各4点となります。
(2)端末設備の接続のための技術及び理論は各2点となります。
(3)端末設備の接続に関する法規は各4点となっております。
また、表内の-は出題無しを示しています。
上記、(1)~(3)の各科目100点満点のうち60点以上で合格となります。
(1)~(3)を全て合格すると工事担任者(AI・DD総合種)の資格取得となります。
合格率
工事担任者(AI・DD総合種)の近年の合格率は下記のとおりです。
年度 | 2016年(2) | 2017年(1) | 2017年(2) | 2018年(1) | 2018年(2) | 2019年(1) |
---|---|---|---|---|---|---|
受験者数 | 4,274名 | 3,817名 | 4,165名 | 3,555名 | 4,261名 | 3,503名 |
申請者数 | 5,969名 | 5,176名 | 5,737名 | 4,813名 | 5,697名 | 4,567名 |
合格者数 | 1,052名 | 651名 | 1,022名 | 765名 | 1,082名 | 928名 |
表中の数値は全受験者の合格率平均です。受験科目数別の合格率は、〔1科目受験者〕約65%、〔2科目受験者〕約20%、〔3科目受験者〕約12%と大きく差が出ております。免除科目が少ない方が早期合格するには、計画的な学習が必要となってきます。
工事担任者資格取得のメリット
工事担任者資格を取得すると、個人及び企業に多数のメリットがあります。
技術力の証明となる
工事担任者の資格に合格すると資格者証が交付されるので、技術力の証明となります。実際に一般家庭などへ工事へ行った際には、資格者証を提示できるため、技術者としてお客様に安心感を与えることができるでしょう。また資格を取得したことで社内からの評価も上がり、給料が上がったり、手当がついたりする可能性もあります。
転職の際、大きな武器となる
電気通信工事の業界は技術職なので、自分の持っている知識や技術を証明できるものがあれば、転職時にとても有利です。工事担任者の資格の中でもAI・DD総合種は最上位の資格のため、電気通信工事を営む企業としては必要な人材となります。
情報通信エンジニアの資格も取得できる
情報通信エンジニアの資格は、最新の技術・知識を習得している工事担任者である事を、お客さんに証明できる資格です。この資格を取れるのは、「DD第1種~第3種およびAI・DD総合種のいずれかの資格者証の交付日から1年未満の人」または「DD第1種~第3種およびAI・DD総合種のいずれかの資格者証の交付日から1年以上経過した人で、協会が別に指定する研修を修了した人」が対象になるため、工事担任者の資格がないと取得することが出来ない資格となります。
まとめ
スマートフォンやタブレットなど、デバイスの急速な普及に伴って通信工事の需要は年々高まっています。併せて、これから加速度的に進化が予測されるIoTに対応していくには情報通信ネットワークの接続に精通した「工事担任者」資格の保持者は必要不可欠となってきます。
特に、アナログ・デジタル問わず全ての端末設備を接続するための工事を取り扱うことができる『AI・DD総合種』は、IPネットワークや情報セキリュティなど最新の知識・技術力を証明することができる資格として今後ますます注目されていくでしょう。
今すぐ学習を始めて早すぎるということはありません!通信設備工事に関わる方は、是非この工事担任者資格の取得を目指してみてはいかがでしょうか。
