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建設業界は特殊!?業界特有の粗利益の決まり方を把握していますか?

  • 経営

はじめに

突然ですが、建設業界には他の業界とは決定的に異なっている商習慣があることご存じでしょうか?

建設業界の企業経営で利益やお金の把握が難しくなるのは、まさしくこのことが原因となっています。

 

それは、「建設業界特有の粗利益の決まり方」です。

 

建設業の粗利益の計算方法は、一般の事業とは異なる特徴が多く在ります。

具体的には、建設業は工事期間が長く請負金額が高額であることから、一般的な会計とは異なる性質をもっています。

また、業界特有の粗利の決まり方があるため、さらに財務管理を難しくしています。

 

今回は、建設業界に特徴的な粗利益について説明していきます。

 

建設業界の独特な経理の方法

通常、粗利益(粗利)は以下の計算式で表されます。

粗利益 = 売上高 - 売上原価

例えば卸売業を例にしてみると、5千円で商品を仕入れて7千円でそれを販売した場合、

2千円(粗利益) = 7千円(売上高) - 5千円(売上原価)

となり、2千円の粗利を稼いだことになります。

 

いくら利益を出したかを計算する際にポイントとなるのは、売上や仕入を計上するタイミングが基本的に「納品」を基準としていることです。

つまり、いくらたくさん仕入をしても、それが販売されて納品されなければ売上も仕入も計上されずに、仕入れたものは「商品」として在庫に計上されるのです。

 

建設業でも同様の考え方が用いられることが多く、納品、つまり建設業でいえば「完成」して「引き渡す」までは売上も売上原価も計上されません。これを工事完成基準といいます。

 

工事完成基準では、粗利の計算式は以下で表されます。

完成工事総利益(粗利益) = 完成工事高(売上高) - 完成工事原価(売上原価)

 

建設業の場合、工事期間が長くなりやすい特徴があります。

そのため、期間中に材料を仕入れたり外注費などの役務提供を受けたりして、その対価を支払ったとしても、完成して引き渡すまでは完成工事原価(売上原価)には計上されません。

同様に、元請先から中間金などの入金があっても、それは完成工事高(売上高)に計上されません。

 

その間に発生した支払いや入金の金額は、実は以下の項目を使って処理しています。

 

科目

内容

未成工事支出金

まだ完成していない工事に対して支出した材料費、外注費、労務費等

未成工事受入金

完成する前に元請先から受け取った工事代金の一部、着手金、中間金等

工事未払金

納品や役務提供は受けているが、まだ支払っていない材料費、外注費等

 

建設業で利益やお金などの財務管理が難しいのはこの点にあります。

工事の進行具合と実際にかかっている売上原価、そしてそれとは別の動きをする入出金。

これらをしっかり把握するために上記の科目を用いてしっかり状況を分析することが、経営者や責任者には求められます。

 

建設業界特有の粗利益の決まり方

前述のとおり、建設業界の経理の方法は複雑で、きちんと利益が出ているかを把握するのに手間がかかります。

さらに、建設業の経営上、粗利益の確保をより一層難しくしているのが、粗利益の建設業特有の決まり方にあります。

 

一般的な業種では、仕入や製造原価などの金額が販売時点よりも前に把握できることができ、そこに適正な利益をのせて売値を決めることができます。

この利益が粗利益となります。

 

前出の卸売業を例にしてみると、仕入金額の5千円を事前に把握できるため、そこに2千円の粗利益を獲得したい場合は売値を7千円に設定することができます。

 

これは家電メーカーなどの製造業、商品を仕入れて販売する卸売業や小売業、また飲食業など多岐にわたる業種が当てはまります。

 

一方、建設業の場合はいかがでしょうか?

建設業界では、受注金額が確定してから工事の進行とともに後から材料費や外注費を支払います。

これが、建設業界の特殊な商習慣であり、粗利益や現預金の把握や予測を難しくしている根本的な要因です。

一般的な業種は、売値が決まるよりも前の段階で原価が把握できるのに対し、建設業界はそれが逆転し、商品を生産する前に販売価格(受注金額)が先に決まります。

 

 

具体的には、受注金額が5千万円と決まってから、実際に材料費や外注費が発生します。

受注金額は、工事内容から事前にかかるであろう材料費や外注費を見積もったうえで決めていきます。

そのため、工期の遅れや材料の発注ミスなどにより、当初想定していた見積りよりも原価が多くかかってしまい、赤字工事となってしまうこともあり得ます。

 

このように順序が逆転していることによって、見積りの粗利益から大きく下振れる、完成するまで粗利益の予測が立たない等の課題が発生します。

 

原価管理と粗利改善のアイデア

前述のように、建設業界は確定した受注金額に対して後から原価を考えていくため、他の業界以上に原価管理は経営上の重要なポイントです。

そんな中で、経営者の方へお伝えするアイデアの一例を掲載します。

 

① 見積りの精度

粗利益を良くするためには、赤字工事を無くすことが第一です。

まずは外注費、材料費で分類し、見積りと実績のデータを比較しましょう。

見積と実績の差には、利益改善につながる有益な情報が隠れています。意識して取り組むことで見積りの精度は上がり、業務の効率化にもつながります。

 

② 信頼できる外注先

工事の遅れも原価を引き上げる要因のひとつです。

依頼した外注先のスケジュール遅延や倒産といったトラブルは、工事の遅れを起こします。

①と同じく、工期の予定と実績を比較することで、改善すべき点が明らかになることが多いです。

 

③ 現場監督の内省化

建設業界は特に人が重要な業界です。

今回のテーマで言えば、現場を取り仕切る立場の方の影響力は大きいものがあります。

したがって、優秀な現場監督の採用や育成は、原価管理や利益の改善効果が大きいと言えます。

外部委託の場合には、原価管理を徹底するような誘因が働きにくい場合が多く、内製化がポイントと言えます。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

 

今回は、建設業界特有の経理処理の方法と、他業界とは異なる粗利益の決まり方について解説しました。

特に建設業界は工事期間が長いこともあり、工事原価よりも先に受注金額が決まることが他の業種と比べて特異な点です。

 

そのため、綿密な業務管理や工程管理、予実管理を行い、工事原価管理を徹底することが非常に重要となります。

 

もし粗利率が低いといった課題がある場合、その課題の根本的な原因を発見し改善を図ることが、企業の持続的な発展には欠かせません。

 

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