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赤字工事はどこだ?取引先毎の採算調査やっていますか?

  • 経営

はじめに

一般の業種と比べて、請負金額が大きい、工期が長い、外注が多い、製造原価よりも請負金額が先に決まる、これらは建設業界ならではの特徴です。

 

なかでも、原価が後から決まる仕組みによって発生してしまう「赤字工事」の問題は、建設業界の経営を難しくしている原因ではないでしょうか。

業績が芳しくない企業のボトルネックが、赤字工事によるものであるケースは少なくありません。

 

そこで今回は、「赤字工事の見つけ方」をテーマに、意識しないと赤字になりやすい建設業界の根本原因と改善策、そして、赤字工事を見つける具体的な方法について説明していきます。

 

建設業界に赤字企業が多い理由

建設業界は、請負金額が原価の前に決まるため、(粗)利益の把握・予測が難しくなっています

(詳細は「建設業界特有の粗利益の決まり方」をご覧ください。)。

 

それに加えて、建設業界によくみられるのは「売上至上主義」の経営です。建設企業が売上重視の経営に陥ってしまう要因として以下2点が挙げられます。

 

① 資金繰りの問題

建設業界に特徴的な風習として、3:3:4といった着工金・中間金の仕組みがあります。

 

日々の資金繰りに余裕がない企業は、着工金で人件費や家賃などの固定費を賄うために、採算が悪い案件でも受注せざるを得ないといった資金繰りの難しさがあります。

 

もちろんこれは利益率の低下を意味し、ますます悪循環を引き起こしてしまう原因になります。

② 経営審査の問題

建設企業が必然的に売上重視の経営になる要因として、公共事業の入札に必要となる「経営審査」の影響が挙げられます。経営審査の評価基準は、売上高による配点基準が大きいと言われており、利益が増加しても、売上高が下がれば評点が低下するということもあります。

そのため、公共事業を柱にしている企業は特に、利益ではなく売上に意識が向いてしまうという点があります。

 

上記のような商習慣や公的制度の影響で、売上重視の経営となりやすいのが、建設業界の特徴と言えます。

経審や目下の資金繰りを無視することができない為、売上至上主義から抜け出せず、結果として利幅の狭い工事や赤字工事の受注を許容してしまう、これが建設企業が赤字経営や事業継続に苦戦しやすい要因です。

 

しかしながら、売上重視の経営から「粗利重視」の経営に転換することによって、中長期的に状況を改善することができるのです。

 

貴社の必要粗利額は?

では、粗利重視の経営とはどのようなものでしょうか。はじめに、貴社の経営に必要な粗利益はいくらでしょうか。

 

経営に必要な粗利益とは具体的には、社員の給与や事務所の経費などの固定費の支払いに、銀行借入の元本返済・支払利息、そして現状の設備を維持する投資などを加えた金額です。

売上ではなく、この粗利額を目標として、受注を積み上げていくことによって、粗利重視の経営に転換することができます。

 

さらに言えば、業績連動の賞与支給やベースアップ等、社員のモチベーションアップにつながる利益の還元も加味した粗利目標を設定すると尚良いでしょう。

 

まずは、いくら粗利を上げればよいのかを逆算することが、粗利重視の経営への第一歩となります。

 

 

赤字工事の見つけ方

では、最後に赤字工事を見つける分析方法についてご説明します。

 

粗利重視の経営を実践していくなかで、赤字工事や著しく利幅が狭い工事を避けることができるようになれば、大幅な改善効果が期待できるはずです。

 

以下のステップに沿って分析していきます。

 

ステップ1

この分析では、過去の一つひとつの工事を数字で正しく把握することが重要です。

発注者・請負金額・売上原価・粗利額・粗利率の一覧表を用意しましょう。

 

はじめに、過去の工事毎の採算をチェックしていきます。直近1年だけでなく過去3期の分析するとより高い精度が得られます。

ステップ1では、赤字工事や著しく利幅が狭い工事を確認し、それらに共通する点の洗いだしを行います。例えば以下の分類にわけて分析することで、それらの工事に共通する要素を探していきます。

 

取引先別

売上高順に並び替えて全体への影響力を検討する

予算規模別

大中小など工事の規模で分類して分析する

担当者別・エリア別など

担当者やエリアによって重大な影響がないか分析する

ステップ2

次は、ステップ1の赤字工事や利幅が狭い工事を受注しなかった場合に得られた粗利益額はいくらだったのかを確認します。目標粗利額に達していますか。もし達しているのであれば、これらの工事の受注を切ればよいということになります。

 

目標粗利額に達していない場合は次のステップに進みます。

 

ステップ3

最後に、目標粗利率が確保できている工事を抽出します。

 

目標粗利率とは、目標粗利額の達成するために目指すべき粗利率です。

必要粗利額を売上高で割って算出します。

 

目標粗利率=必要粗利額÷売上高

 

ここで重要なのは、売上高は平年並みを基準として計算することです。

売上高を増した粗利の目標設定は、結局のところ「売上重視」の経営に他なりません。粗利重視の経営に転換するためには、売上高はそのままに粗利率を改善させることに絞って検討する必要があります。

 

目標粗利率の分析を行い、二つに分類します。

 

①目標粗利率が達成している工事

②目標粗利率未満の工事

 

①の工事を積極的に取りに行く、②の工事の粗利率を改善する方策を行うことで、粗利目標の達成・粗利重視の経営を実現していきましょう。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

 

今回は、「赤字工事」をテーマに、売上に意識が向きやすい建設業界の性質、そして粗利重視経営に取り組むべき理由やメリット、その方法などをご説明してきました。

 

経営に必要な粗利額から逆算して、目標粗利率を積み上げていくという考え方で、是非一度過去の工事の採算分析を行っていただきたいと思います。

 

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