「タンコロ」で、建設業界の資金繰りも劇的に改善!銀行が教えてくれないおカネの借り方とは?
- 経営

はじめに
経営者にとって、日々の資金繰りは重要な業務のひとつです。
建設業においても、複数の長期借入金があり、銀行との追加融資の交渉に時間を取られて、本業に集中できないという話をよく聞きます。
そのため、今回は中小企業の資金繰りを劇的に改善する資金調達の方法についてご説明いたします。
「短期継続融資」という言葉をご存じでしょうか。初めて耳にする経営者の方も多いと思います。
かつて短期継続融資は、銀行からの調達方法として一般的なものでしたが、バブル崩壊による不良債権問題を受け、短期継続融資の商習慣は失われていました。しかしながら、2016年以降、金融庁主導のもと再び短期継続融資による融資が広がってきています。
今回は、「短期継続融資」についてそのメリット・デメリットや、建設業における活用事例について解説していきます。
短期継続融資と経常運転資金とは?
法人の資金調達の方法のひとつに、銀行融資があります。
融資や借入と聞くと、その元本を長期にわたって毎月返済していくようなものを想像されるのではないでしょうか。
実はあまり知られてはいませんが、毎月の返済ではなく、借入期日(基本的に1年以内)が来た時点で一括返済をする、という調達方法があります。
また、この期日に再度同額を借り入れることにより、実質的には返済がないかのように銀行から借入れる手法があります。
これを「短期継続融資」(通称タンコロ※)と呼びます。
※短期融資をころがすという表現に由来

短期継続融資を利用できるのは、以下で説明する「経常運転資金」部分の金額になります。
経常運転資金とは
企業の資金まわりは売掛や買掛といった掛取引により、仕入代金の支払いと売上金の入金にタイムラグが発生します。
支払いが先行する場合、支払いから売上入金までの期間、企業はある意味で立替えをしているような状態になります。
この立替えている部分のことを「経常運転資金」と呼びます。
自社の決算書の貸借対照表を見ていただいた時に、以下の計算式で簡易的に表されます。
経常運転資金=売上債権+棚卸資産-仕入債務

この経常運転資金は、企業が事業を継続している限り常に発生するため、経常運転資金を毎月返済の方法で借入れている場合には、必然的に資金繰りは厳しくなります。

そこで、経常運転資金に対応する金額を長期借入金から短期借入金に借り換えることによって、毎月の返済額が減少し、日々の資金繰りは劇的に改善することになります。
今現在、日々の資金繰りに困っている企業にとって、タンコロを検討することは非常に有効な手段となります。

短期継続融資に借り換えるメリット・デメリット
短期継続融資を活用するメリット・デメリットは以下の通りです。
【メリット】
毎月の借入金返済額が少なくなり、資金繰りが改善する
業績がよければ返済を求められず、更新することが可能(基本的に6ヵ月や1年ごとの見直し)
銀行の支援体制が強固になる
【デメリット】
銀行へ財務情報の毎月開示が必要(試算表や資金繰り表等の提出)
業況が悪化した場合は更新できない可能性がある
※一般的には複数期連続の赤字等が基準と言われておりますが、銀行により基準が異なり公開もされていません。更新できない場合には、毎月返済の借入となることが一般的です。
現金商売の業種は、経常運転資金が発生しないため短期継続融資は利用しづらい(飲食業や小売業等)
以上のように、資金繰り改善という大きなメリットがある一方で、銀行が日常的なモニタリングを行うため、適時財務情報の提供が求められる点や、業況によっては更新できなくなるといった点に注意が必要です。
建設業界における短期継続融資
これまでの金融業界の考え方では、建設業のビジネスモデルは同一取引先からの継続反復的なサイクルではなく、あくまでプロジェクト単位の個別案件の色彩が強いとして、短期継続融資の活用は難しい業種と考えられてきました。
しかしながら、ここ数年の金融環境の変化として、「業種や実態に合わせて柔軟に短期継続融資の検討をすべきである」との金融庁の指導が入り、建設業界やIT業界をはじめとした、従来は短期継続融資が難しいとされてきた幅広い業種で導入が検討されるように変化しています。
一例として、政府系金融機関である商工中金では、地方の建設業社に対し、短期継続融資を活用した財務支援と不随する本業支援をサポート事例としてホームページに掲載しております。
株式会社商工組合中央金庫『短期継続融資を導入し、財務のリバランスを図る茨城県の土木建設業者をサポート』
短期継続融資の導入・活用には、銀行からの支援が不可欠であり、双方の信頼関係の上に成立する資金調達方法です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
短期継続融資は利用することによって、毎月の借入返済額を削減することができ、資金繰りの劇的な改善が期待できます。また、近年では金融庁の指導のもと、従来は導入が難しいと考えられていた建設業についても、企業の実態に即した柔軟な対応が求められています。
是非まずは、貴社の経常運転資金に大まかに確認し、お取引銀行の融資担当者とディスカッションをご検討ください。
