借金なのに資本になる!?資本性劣後ローンとは?
- 経営

はじめに
2020年4月に第1回目の緊急事態宣言が発令されてから既に2年の月日が経過しました。
経営を取り巻く環境は依然として厳しく、資金繰りに苦しむ企業も少なくありません。
そんな中、日本政策金融公庫や商工中金等による新型コロナウイルス感染症対策資本性劣後ローンが、建設業界の中でも資金繰り改善の選択肢として注目されています。
今回は、新型コロナ対策資本性劣後ローンとは何か、及びメリット・デメリットを解説していきます。
新型コロナウイルス感染症対策資本性劣後ローンとは?
「新型コロナウイルス感染症対策資本性劣後ローン」は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、事業再生に取り組む企業、また収束後の事業の発展または維持に取り組む企業が対象となる、日本政策金融公庫や商工中金等の融資制度です。
広く利用されている「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と比較して、取り上げられる機会も少なく、聞き馴染みがない方も多いのではないでしょうか。
ここではまず、制度のポイントを2点ご説明いたします。
ポイント①
この制度を利用して調達した資金は、負債ではなく自己資本とみなされます。
自己資本とは、株主から調達した資本金や事業で稼いだ利益(繰越利益剰余金)のように、返済する必要のない資産のことです。
資本性劣後ローンで調達した資金は、民間の金融機関からは自己資本として評価されるため、民間から追加の融資を受けやすくなるというメリットがあります。
ポイント②
この制度で調達した資金は、万が一企業が倒産した場合、回収の優先順位が最も低いものとして扱われます(償還順位が同等以下のものを除く)。
優先順位が他の全ての債務に劣後することから、劣後ローンと呼ばれます。このことからも、民間金融機関が企業に追加融資をしやすくなることがわかります。
ポイント①にもあるように、この融資の最大の特徴は借入金ではあるが、民間金融機関からは自己資本とみなされることにあります。
図1のように、通常の借入金は「負債」であるため、自己資本は赤枠に示す「純資産」だけになるのに対し、資本性劣後ローンは自己資本とみなされるため青枠で示されるように自己資本比率が大きくなります。
これにより、民間の金融機関からの追加融資が受けやすくなり、さらに経営が安定することが見込まれます。

図1 通常の借入金と資本性劣後ローンの違い
制度の概要
本制度の概要は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
対象企業 | 事業計画書を策定し、民間金融機関等による支援を受けられるなどの支援体制が構築されている方※ ※原則として、融資後1年以内に民間金融機関等からの資金調達が見込まれること |
利用使途 | 設備資金、運転資金 |
融資限度額 | 7,200万円(国民生活事業)、10億円(中小企業事業、商工中金) |
返済期間 | 5年1ヶ月、7年、10年、15年、20年 |
返済方法 | 期限一括返済(利息は毎月払い) |
利率(年) | 当初3年間は0.50% 4年目以降当期純利益が0円以上の場合2.60%~2.95%(0円未満の場合は0.50%) |
担保・保証人 | 無担保・無保証 |
融資条件 |
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最大の特徴は、2でも触れたように民間金融機関から自己資本とみなされることにあり、さらに倒産時の回収順位が全ての債務に劣後することから、他の金融機関から追加融資が受けやすくなることが挙げられます。
さらに、返済方法が期限一括返済であることから、毎月の元本返済が不要となり日々の資金繰りを劇的に改善させる効果があります。
一方で、貸し付ける側が相応のリスクを負うため、審査時に新型コロナウイルス感染症対策資本制劣後ローン専用の事業計画書の提出が必要で、審査の難易度はかなり高いと言われています。
当然、返済期限までにしっかりと利益を出し、一括返済による回収ができるのか?という視点で厳しく審査されるためです。
さらに毎期の経営状況の報告が義務化され、しっかりとしたモニタリングを自社内でも行うことが必須となります。
メリット | デメリット |
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まとめ
いかがでしたでしょうか?
資本性劣後ローンは、借入金ではありますが自己資本とみなされるため自社の財務改善につながり、さらに月々の元本返済がなく、当初3年は金利0.5%であるため、劇的な資金繰り改善につながる融資制度です。
一方で、期限一括返済や4年目以降の金利の増加など将来の負担も大きいため、しっかりと事業計画を立てて活用が適切かを検討する必要があります。
制度を活用する場合は、審査基準も高く専用の事業計画書の提出なども必要になるため、顧問税理士など専門家にまずはご相談することをお勧めします。
