今一度、借入による資金調達の基本を抑えましょう!
- 経営

はじめに
建設業だけでなく中小企業全般に言えることですが、日々の営業活動を行い利益を高めていくうえで絶対に必要なことは、「ヒト・モノ・カネ・情報」をどうコントロールしていくかに尽きます。
その中で「カネ」は中小企業経営における「血液」と例えられることが多く、赤字でも企業は倒産しませんが「カネ」がなくなった瞬間に企業は倒産します。
中小企業経営者は日々資金繰りのことが頭から離れませんが、幹部社員や現場責任者は目の前の業務やタスクが手一杯で資金繰りについてほとんど考えたことがないのではないでしょうか?また経営者にとっても、銀行が会社の何をみて融資の判断をしているのか知らないことがほとんどです。
今回は、銀行借入による資金調達の基本とポイントについてご説明します。
金融機関ごとの特色を知ろう!
まず、金融機関を大きく2つに大別すると「政府系金融機関」と「民間金融機関」に分類されます。
さらに、その中でも規模や地域性によって以下のようにグループ分けされます。
大分類 | 小分類 |
政府系金融機関 | ・日本政策金融公庫(国民生活事業) ・日本政策金融公庫(中小企業事業) ・商工組合中央金庫 など |
民間金融機関 | ・メガバンク ・地方銀行 ・信用金庫 ・信用組合 など |
まず、政府系金融機関で経営者の皆さまにもおなじみなのが、日本政策金融公庫ではないでしょうか?
日本政策金融公庫では、以下のような企業や経営者の方に門戸を広く開けています。
- 創業して間もない方
- 事業が拡大している方
- 新事業に取り組む方
- 一時的に業況が悪化している方、事業の再建を図る方
- 災害や新型コロナウイルスの影響を受けた方
以上から分かるように、日本政策金融公庫には多種多様なニーズに適した融資制度があり、自社に適した制度を活用することで有利な条件で融資を受けることが可能です。
また、新型コロナウイルスが猛威を振るいだした2020年以降は、日本政策金融公庫や商工中金などの政府系金融機関を中心に、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」や「新型コロナウイルス感染症対策資本性劣後ローン」など、特にその影響を受けた企業に対して手厚く支援をしており、昨今の倒産件数の低さなどに繋がっていることは間違いありません。
民間金融機関の融資には、プロパー融資と保証協会付き融資の2種類があることはご存じでしょうか?
プロパー融資とは、金融機関自身が企業に対して直接融資を行うことを指します。
一方、保証協会付き融資とは、信用保証協会という機関が企業を保証し、民間金融機関はその保証を元に企業に融資をする仕組みです。
信用保証協会とは企業が万が一倒産した際に、企業に代わって民間金融機関に対して借金を保証してくれる公的機関です。
プロパー融資よりも、保証協会付き融資の方が、金融機関にとって貸し倒れのリスクが低いため、中小企業やベンチャー企業への融資は、基本的に保証協会付きが多くなっています。
この場合、企業は金融機関への借入利息に加えて、保証協会に対して保証料を支払う必要があります。
金融機関は企業の何をみて、融資の判断をしているのか?
銀行格付
皆さまは「銀行格付」という言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれません。
金融機関や銀行担当者は、企業の決算書や取引履歴などから企業をランク付けしています。
このランク付けのことを銀行格付といいます。
銀行格付は1~10までのランクがあり、数字が少ないほど優良企業とみられ金融機関から高い評価を受けることができます。
銀行格付 | 格付種類 | 債権者区分 |
ランク1 | リスクなし | 正常先 |
ランク2 | あまりリスクなし | |
ランク3 | わずかのリスク | |
ランク4 | リスクはあるが良好 | |
ランク5 | リスクはあるが平均的 | |
ランク6 | リスク高いが許容範囲 | |
ランク7 | リスク高く徹底管理 | 要注意先 |
ランク8 | 警戒先 | 要管理先 |
ランク9 | 延滞先 | 破綻懸念先 |
ランク10 | 破綻先 | 実質破綻先 |
※実際の格付診断基準は金融機関ごとに異なります。
銀行格付は主に「決算書等の定量的な数値」と「決算書にはない定性的な要素」を基に評価されます。銀行格付が高い企業は融資できる金額の枠が大きくなり、金利は低くなります。反対に、銀行格付が低い企業は融資できる金額の枠が小さくなり、金利も高く設定されます。融資可能の枠が小さいため、希望する金額が満額融資されなかったり、場合によっては、融資を断られたりということも出てきます。
必要なときに必要な分を借りることができる基礎を作るためには、この銀行格付を高めていくことが必要です。銀行格付が高くなることで保証協会付き融資だけでなく、プロパー融資を選択することができるようになるため、より財務基盤が盤石になります。
銀行格付を高めるためには日々の経営改善をすることはもちろん、見せる決算書をどう作るか?といった観点も重要となるため、今一度顧問税理士にも相談することをおすすめします。
事業計画書
融資の申し込みの際に、金融機関から事業計画書の提出を求められることもあります。
この事業計画書とは、企業のこれからの戦略や経営環境の変化などにより、どのように企業を成長させていくかという経営者の意思を具体的数値とともに記載していきます。
銀行内では融資判断をする際に、稟議書という書類が担当者から決裁者(支店長や本部)の手に渡ります。担当者はその企業に対する融資を引き出すために、決裁者が融資をしても良いと判断できる材料を決裁者に対して示さなくてはなりません。
その一つが事業計画書になります。
金融機関が融資を判断する際は、銀行格付に加えて事業の成長性や収益性についても検討しています。事業計画書には、定量的な数値計画に加えて、定性的な戦略等をしっかりと言語化して記載していくことが必要です。具体的には、企業の現状や経営課題に対する改善策、事業の成長性・収益性などが挙げられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
金融機関から借入を検討する際に、相手は誰か、どのような融資にするのか、そして融資のために何が必要なのか、といったことを多角的に検討することが、融資戦略に勝つための第一歩です。
また、必要な資金を必要なときに融資をしてもらうためには、日々適時的確なタイミングで試算表を金融機関に提示し、金融機関担当者と強い協力関係を結んでおくことが重要です。そのためには、毎日の経営状況をしっかりと財務状況に反映させられるように、経理環境を整えておくことが必須条件となります。今後生き残る企業、強い企業は、必ずこの部分を徹底的に磨いています。
御社の経理環境は、銀行融資を受けられる体制を既に構築できていますか?
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