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給水装置工事主任技術者について
水道は、人が生きていくために最も重要なインフラです。
生活するために必要な水道水を安定して供給するために必要となる給水設備。その給水設備工事の施工を唯一認められている資格が給水装置工事主任技術者です。給水装置工事主任技術者は、給水装置工事事業者が水道事業者から水道法に基づく指定を受けるために必須の国家資格者となるため、どの企業も喉から手が出るほど欲しい人材と言えるでしょう。
では、どういった人が給水装置工事主任技術者になれるのか、どのような試験なのかを見ていきましょう。
給水装置工事主任技術者になるための受験資格は?
給水装置工事主任技術者を受験するための受験資格は「給水装置工事に関して3年以上の実務の経験を有する者」とされており、この“給水装置工事に関する実務の経験”を管轄である厚生労働省は下記のように定めています。
給水装置工事に関する 技術上のすべての職務経験をいう。
技術上の職務経験とは、給水装置の工事計画の立案、給水装置工事の現場における監督に従事した経験、その他給水装置工事の施工を計画、調整、指揮監督又は管理した経験及び給水管の配管、給水用具の設置等の給水装置工事の施行の技術的な実務に携わった経験をいい、これらの技術を習得する ためにした見習い中の技術的な経験も含まれる。なお、工事現場への物品の搬送等の単なる雑務及び給与計算等の単なる庶務的な仕事に関する経験は、同条でいう実務の経験には含まれないことに留意されたい。
そもそも「給水装置」とは?
給水装置とは、水道事業者が道路下に設置した配水管より先から、配水管の水圧を利用して使われる建物の給水用具(蛇口、給湯器、自動湯張り型風呂、洗浄便内蔵型大便器など)までの範囲における工事をいいます。
(試験を実施している給水工事技術振興財団は「水道事業者の配水管から分岐して設けられる給水管と、それに直結して設けられる給水用具」と定めています)
尚、水道メータの取付けや取外し、交換等の作業も実務経験に含まれています(検針のみの業務は実務経験に含まれません)。
給水装置工事主任技術者の実務経験に含まれないものを知っておこう
給水装置工事とは、水道事業者が道路化に設置した配水管より先の工事を指すため、「水道施設のみ」の建設工事は給水装置工事ではないため実務経験に含みません。(維持管理業務についても同様です)
また、給水装置工事であっても現場への物品搬入など雑務及び事務の仕事は実務経験に含まれません。
実務経験は2つ以上の事業所(会社)に渡っての合計でも受験することが可能ですが、その場合はそれぞれの会社で証明を得る必要があります。
給水装置工事主任技術者試験を受けるための手続き方法と申請書類
給水装置工事主任技術者の試験を受けるためには、所定の試験実施機関に受験願書を提出する必要があります。
年に1回の試験ですのでうっかり出願手続きを忘れてしまい受けられなかったということがないよう、ここでしっかりチェックしておきましょう。
給水装置工事主任技術者受験までの流れ
令和4年度給水装置工事主任技術者試験日程(予定)
受験申請受付開始 | 令和4年5月中旬 |
---|---|
受験申請受付締切 | 令和4年6月下旬 |
受験票発送 | 令和4年10月上旬 |
試験実施日 | 令和4年10月下旬 |
合格発表日 | 令和4年11月下旬 |
一般的に試験に合格して免状の交付を申請後、厚生労働大臣より給水装置工事主任技術者の免状が交付されるまでにはおよそ2ヶ月かかります。その後、給水装置工事主任技術者証が必要な場合は発行申請してから給水工事技術振興財団理事長より給水装置工事主任技術者証が発行されるまで更に1ヶ月の期間を要します。
受験の申請が始まってからおよそ8~9ヶ月かかりますので、注意しましょう。
受験願書は試験実施団体のウェブサイトよりダウンロードする
給水装置の受験願書は、書店や試験実施団体から購入する形ではなく、実施機関のウェブサイトより受験者自身の情報を登録しダウンロードする形式です。ウェブサイト上での登録のみでは受験できませんのでご注意下さい。
受験申請可能期間になりましたら、試験実施機関ウェブサイト上より登録フォームに遷移することができるようになりますので、必要事項を入力後、ダウンロードし所定の送り先へ郵送して下さい。
試験実施団体:給水装置技術振興財団
受験願書の提出は1日でも過ぎてしまうと如何なる理由であってもその年の受験申請は受け付けられません。
給水装置工事主任技術者の受験願書を提出する際、必要な書類は?
受験願書を提出する際は、下記の1~3の書類をご準備いただく必要があります。
期限ギリギリになって揃えようとしたものの間に合わず、提出ができなかったということにならないよう、余裕を持って用意しておくことをお勧めいたします。
1.受験願書・実務従事証明書
給水装置工事主任技術者の受験願書には、実務従事証明書といって受験者の実務経験を証明する欄があります。
この実務従事証明書には、事業所の代表印(社印は不可)が必要です。
2.証明写真
縦4.5cm、横3.5cmのフチがないものと定められております。正面から上半身を撮影し、無背景で6ヶ月以内の物を準備して下さい。
3.払込確認用紙
受験手数料は郵便局の窓口やATMでお支払いいただく形です。受験願書を提出する際に、ご入金完了の際に受け取る「振替払込請求書兼受領証」もしくは「ご利用明細票」の原本が必要となります。
注意事項
実務従事証明書など、申請の時点で虚偽の申告があった場合は厚生労働省より厳重注意を受け、試験に合格した場合は合格を取り消されます。偽らず、正確に記述しましょう。
給水装置工事主任技術者試験って、どんな試験なの?
給水装置工事主任技術者となるには、厚生労働省が指定する試験実施団体が行う国家試験に合格しなければなりません。免状を受けるためにはこの国家試験に合格することが必要です。
受験科目と主な内容
試験科目 | 主な内容 |
---|---|
1.公衆衛生概論 |
|
2.水道行政 |
|
3.給水装置の概要 | 給水管及び給水用具並びに給水装置の工事方法に関する知識を有していること |
4.給水装置の構造及び性能 |
|
5.給水装置工事法 | 給水装置工事の適正な施行が可能な知識を有していること |
6.給水装置施工管理法 |
|
7.給水装置計画論 | 給水装置の計画策定に必要な知識及び技術を有していること |
8.給水装置工事事務論 | 工事従事者を指導、監督するために必要な知識を有していること |
※上記「3.給水装置の概要」「7.給水装置施工管理法」に関しては、1級または2級の管工事施工管理技士をお持ちの方は免除されます。
合格基準点(平成30年度の例)
給水装置工事主任技術者試験が難関と言われる理由の1つに、「科目ごとの合格基準点」いわゆる「足切り」が存在していることが挙げられます。平成30年度の試験を例にとってみます。
配点(平成30年度の場合)
1問1点の必須科目6問で計40点、全科目で計60点
合格基準(平成30年度の場合)
下記(1)~(3)の基準があり、「学科試験2」の免除者は(1)と(3)を、非免除者は(1)~(3)の全てを満たす必要があります。
(1)必須6科目(学科試験1)の得点の合計が、27点以上であること。
以下(3)の項目で示す各科目の最低基準点を合計すると15点が合計値です。つまり、最低基準点を獲得した上で、更に合計で27点以上を取ることが必要だということになります。
(2)全8科目の総得点が、40点以上であること。
8科目の最低基準点は合計23点ですので、この基準を満たすためには最低基準点の2倍近くを獲得する必要があります。
(3)次の各科目の得点が、それぞれ以下に示す点数以上であること。
学科試験1 | 公衆衛生概論 | 1点 |
---|---|---|
水道行政 | 2点 | |
給水装置工事法 | 4点 | |
給水装置の構造及び性能 | 4点 | |
給水装置計画論 | 2点 | |
給水装置工事事務論 | 2点 | |
学科試験2 | 給水装置の概要 | 4点 |
給水装置施工管理法 | 4点 |
受験地
給水装置工事主任技術者の受験地は、都道府県別ではなく下記に示す地域別の8地域で行われます。
- 北海道
- 東北
- 関東
- 中部
- 関西
- 中国・四国
- 九州
- 沖縄
受験願書を申請する際、希望の受験地を選びます。詳しい試験会場は届いた受検票及び受検票送付時期にウェブページからご覧になれるようになります。
受験料
非課税で16,800円です。
給水装置工事主任技術者の合格率
過去、直近6年の合格率は下記表のとおり推移しています。
試験実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
平成25年度 | 12,773 | 4,004 | 31.3% |
平成26年度 | 13,313 | 3,588 | 27.0% |
平成27年度 | 13,978 | 4,348 | 31.1% |
平成28年度 | 14,459 | 4,875 | 33.7% |
平成29年度 | 14,650 | 6,406 | 43.7% |
平成30年度 | 13,434 | 5,066 | 37.7% |
例年、20%台後半~30%台と推移している印象です。2017年度は40%台と合格率が非常に高かった年でした。
給水装置工事主任技術者を取得するメリット
受験にあたって、気になるのは「取得したらどんなメリットがあるのか?」という部分ではないでしょうか。
給水装置工事主任技術者を取得すると、個人及び企業に多くのメリットがあります。
水道工事事業者が「指定給水装置工事事業者」の指定を受けるための必須事項
配管を伴う工事の施工を行う事業者は、水道法第16条の2第1項に基づき給水区域内の水道事業体から指定を受けた「指定給水装置工事事業者」に限られます。この「指定給水装置工事事業者」となるためには必要条件を満たし、水道事業体に申請を提出する必要があります。その必要条件は下記のとおりです。(水道法第25条の3)
事業所ごとに給水装置工事主任技術者として選任されることとなる者を置くこと
水道法において、《事業者》と《事業所》の2つは頻出する単語ですが、この違いは千葉県の自治体サイトでは以下のように説明されています。
事業所とは水道局管轄内で事業を行う営業所などのことを指します。
例えば本店が県外、支店が県内にあって、工事をするのは支店のみの場合は
[事業者→本店]
[事業所→支店]
という登録ができます。
上記引用元:千葉県ウェブサイトQ&A
厚生労働省令で定める次の機械器具を有する者であること
- 一.金切りのこその他の管の切断用の機械器具
- 二.やすり、パイプねじ切り器その他の管の加工用の機械器具
- 三.トーチランプ、パイプレンチその他の接合用の機械器具
- 四.水圧テストポンプ
次のいずれにも該当しない者であること
- イ.成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
- ロ.この法律(水道法)に違反して、刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
- ハ.第二十五条の十一第一項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から2年を経過しない者
- ニ.その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
- ホ.法人であつて、その役員のうちにイからニまでのいずれかに該当する者があるもの
経営事項審査において企業の得点に加算される(管工事業)
給水装置工事主任技術者は、管工事業における経営事項審査の技術力評価において、資格者1人あたり1点がカウントされます。公共団体が工事を発注し、公共工事を受注する際の技術力として評価を受けることが可能です。給水装置工事主任技術者の取得により、所属企業の評価向上に貢献することもできます。
一般建設業の現場に置く専任の技術者として認められる
給水装置工事主任技術者は、免状交付後、管工事の実務経験を1年以上積むことで営業所ごとに置かなければならない専任技術者として認められることが可能です。専任技術者の配置は建設業法で営業所ごとと定められているため、早急に確保を必要としている企業も少なくはないでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
給水装置工事主任技術者は、平成30年度の全国合格率が37.7%と6割以上が不合格になっている難しい試験です。
ですが、設問の全てがマークシート式になっており、比較的試験対策が行いやすい試験でもあります。試験範囲が非常に多岐に渡っているため、学習を始めた際はどこから初めて良いか悩む方も沢山いらっしゃるでしょう。
普段、忙しい仕事をしながら学習するのは至難の業ですが、ここに挙げたように取得するとたくさんのメリットを得られます。
学習を始めるには今が好機です。給水装置工事主任技術者という資格を、ぜひ今年合格しましょう!