【施工管理技士試験制度が変更!】改正内容の概要とポイントから今後の試験の方向性までわかりやすく解説
目次
施工管理技士とは
施工管理技士とは、日本の建設業において特定業種の技術を認定した国家資格です。
技術検定の第一次検定に合格した者は施工管理技士補、第二次検定に合格した者は施工管理技士と称することができます。
施工管理技士の等級は1級または2級であり、それぞれ受験資格や難易度が異なります。施工管理技士は、建設業法に基づく許可の要件としての営業所に置かれる専任技術者や工事現場に置かれる主任技術者や監理技術者の資格を満たす者として取り扱われます。
2024年度から試験制度が変更
2024年度からは、施工管理技士の受験資格や試験内容が一部変更になります。主な改正点は以下のとおりです。
- 第一次検定は、1級は19歳以上、2級は17歳以上であれば、学歴や実務経験に関係なく受検できるようになります。
- 第二次検定は、第一次検定合格後、1~5年の実務経験が必要になります。実務経験の期間は、2級の有無や経験する工事の性質に応じて異なります。
- 実務経験に該当する工事の範囲は、検定種目(資格)に対応した建設業の種類(業種)に該当する工事となります。例えば、1級建築施工管理技士の場合は、建築業の工事が該当します。また、複数の検定種目に対応する工事の経験は、同じ経験を複数の検定種目の実務経験として申請できるようになります。例えば、土木一式業の工事において、道路や橋梁などの施工管理を行った場合は、1級土木施工管理技士と1級舗装施工管理技士の両方の実務経験として申請できます。
- 実務経験の証明方法は、原則として、工事ごとに、受検者の勤務先の代表者等または勤務先の会社が請け負った工事の監理技術者等に証明を求めます。令和6年3月31日を含む工事の経験までは、従来の方法(申請時に所属している会社の代表者等)による証明も可能です。
- 令和6年度から令和10年度までの間は、旧受検資格と新受検資格のどちらかを選択して受検できます。(経過措置)
【新受検資格】と【旧受検資格】の比較
まずは、改正前と改正後の受験資格を比較してみましょう。比較すると、以下の表のようになります。
検定種目 | 改正前 | 改正後 |
1級・第一次検定 | 2級の資格を持つか、一定の学歴と実務経験が必要 | 19歳以上であれば受験可能 |
1級・第二次検定 | 第一次検定合格後、一定の実務経験が必要 | 第一次検定合格後、1~5年の実務経験が必要 |
2級・第一次検定 | 17歳以上であれば受験可能 | – |
2級・第二次検定 | 卒業から一定の実務経験があれば受験可能 | 第一次検定合格後、3年以上の実務経験が必要 |
特定実務経験について
特定実務経験とは、請負金額が一定額以上の建設工事において、監理技術者や主任技術者の指導の下、または自ら監理技術者や主任技術者として行った経験のことです。特定実務経験は、第二次検定の受験資格の要件となります。
特定実務経験に該当する工事の範囲は、検定種目(資格)に対応した建設業の種類(業種)に該当する工事となります。例えば、1級建築施工管理技士の場合は、建築業の工事が該当します。
一次検定の一部の問題免除について
1次検定の一部の問題の免除とは、高度な専門教育を行う学校において施工技術の基礎となる工学に関する知識を修得し卒業した者や学士の学位認定を受けた者に対して、一部の問題を免除する制度のことです。免除される問題の数や内容は、検定種目(資格)や学校の種類や学科によって異なります。例えば、土木工学を専門とする大学の卒業者は、1級土木施工管理技士の第一次検定の専門科目と関連科目の合計62単位のうち、32単位分の問題を免除されます。
新制度で受験するのが有利?旧試験制度で受験するのが有利?
経過措置として令和10年度までは、旧受検資格と新受検資格のどちらかを選択して受検が可能ですが、どちらで受験をしたら最短で施工管理技士になれるのか気になるところでしょう。それぞれ有利になるパターンを紹介します。
新制度で受験するのが有利な場合
- 1級の資格を目指す方で、2級の資格を持っていない方や、一定の学歴や実務経験がない方。新制度では、19歳以上であれば第一次検定を受けることができます。
- 1級や2級の資格を目指す方で、高度な専門教育を受けた方や他の資格を持つ方。新制度では、一部の問題を免除したり、新たな受験資格要件を設けたりすることで、施工管理技士の資格取得の敷居を下げます。
旧制度で受験するのが有利な場合
- 2級の資格を目指す方で、卒業から一定の実務経験がある方。旧試験制度では、第一次検定合格後に実務経験が必要ないので、早く資格を取得することができます。
- 1級や2級の資格を目指す方で、既に第一次検定に合格している方。旧試験制度では、第二次検定の受験資格が緩やかなので、実務経験が少なくても受験することができます。
『新受検資格』で受けた場合に『最短で資格を取得できる学歴』
最短で取得できるのは、第一次検定の一部を免除される対象校の卒業生で、一定の実務経験を有する場合です。具体的には、以下のような場合になります。
1級施工管理技士
土木工学または建築学を専門とする大学の卒業生で、卒業後1年の実務経験を有する場合。
2級施工管理技士
土木工学または建築学を専門とする短大、高専、高校の卒業生で、卒業後1年の実務経験を有する場合。
試験制度が改正になる背景
試験制度の改定は、建設業における中長期的な担い手の確保・育成を図るために行われました。具体的には、以下のような理由や背景があります。
第一次検定の受験資格を緩和
1級の第一次検定の受験資格を緩和することで、若年層や女性などの多様な人材の参入を促進し、1級施工管理技士の育成を加速させることができます。現行制度では、2級の資格を持っていない場合は、実務経験が必要でしたが、これでは1級の資格を取得するまでに時間がかかりすぎるという課題がありました。
第二次検定の受験資格を厳格化
2級の第二次検定の受験資格を厳格化することで、2級施工管理技士の技術力の水準を維持しつつ、2級の資格を取得するためのモチベーションを高めることができます。現行制度では、卒業から一定の実務経験があれば受験可能でしたが、これでは2級の資格の価値が低下するという課題がありました。
一部免除制度や新たな受験資格要件を導入
一部免除制度や新たな受験資格要件を導入することで、高度な専門教育を受けた者や他の資格を持つ者に対して、施工管理技士の資格取得の敷居を下げることができます。これにより、施工管理技士の資格を持つ者の多様化やキャリアアップの支援を行うことができます。
将来の施工管理技士試験はどうなる?
将来の施工管理技士試験は、建設業界の変化に対応して、さらに質の高い技術者の育成を目指すと考えられます。具体的に考えられる可能性は以下になります。
さらに試験の難易度や出題範囲を見直す可能性
見直しを行うことで施工管理技士の技術力の水準を向上させることができます。例えば、施工管理技士の基礎となる工学の知識や、現場で必要となる法律や管理の知識などを重視した方向性の試験になる可能性は十分にあるでしょう。
試験の形式や方法を変更
施工管理技士の実践力や応用力を評価することが予測できます。例えば、ペーパーテストだけでなく、コンピューターベースのテストや実技試験などを導入することが考えられます。
試験の頻度や時期を調整
施工管理技士の資格取得の機会を増やすことができます。例えば、年に1、2回の試験ではなく、年に3回以上試験を実施することも可能性としてあります。
まとめ
施工管理技士とは、建設業において特定業種の技術を認定した国家資格です。
2024年度からは、建設業における中長期的な担い手の確保・育成を図るために施工管理技士の受験資格や試験内容が一部変更になります。
もちろん今回だけではなく、将来的にも施工管理技士試験は、建設業界の変化に対応して、さらに質の高い技術者の育成を目指すと考えられるでしょう。
まずは、2024年からの改正をうまく利用して、施工管理技士取得を目指していきましょう。
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